上段左からNEC コーポレート事業開発部門 AgriTechビジネスグループ マーケティング&セールスリーダー/増田様、CropScope Directorプロダクトマネージャー/水野様、シニアプロフェッショナル/渡辺様、下段左からCropScopeシステムズアーキテクチャ/中村様、アグリデータサイエンティスト/山田様、ビジネスクリエイター/谷本様燃料・肥料の高騰、農業従事者減少による効率化の必要性、新規就農者への引継ぎ問題―様々な問題が農業関係者に降りかかっています。そんな逆境に立ち向かう農家の皆様を支えるべく、当社は日本電気株式会社(以降、NEC)と協業し、2023年5月にCropScope連携サービスをリリースいたしました。CropScope連携サービスでは、衛星データを活用して圃場の土壌窒素量や植生を可視化する機能、営農記録を管理する圃場管理機能、最適な施肥量を計算しマップ化する可変施肥マップ作成機能等、充実した機能を皆様にお届けしてまいりました。そんなCropScope連携サービスも皆様のご支援があり、2024年5月にリリース1周年を迎えることができました。節目を迎えた今、リリースまでの裏側や今後にかける想いについてCropScopeサービスを提供するNECのご担当者様にインタビューし、前後編に渡ってお届けします。前編はNEC コーポレート事業開発部門 AgriTechビジネスグループ CropScopeシステムズアーキテクチャ/中村様と、アグリデータサイエンティスト/山田様にお話を伺いました。-CropScopeを開発してきた中でお客様におすすめしたい点や、注目してほしい点はありますか?中村さん)できるだけわかりやすく、簡単に扱えるサービスを目指して設計しました。私自身は最初の実証実験の際はおらず、途中から参加したのですが、これまでのサービス開発の経験を活かし、どう設計すればお客様が使いやすくなるのだろうかと、深く考えながら開発に取り組みました。例えば、可変施肥・播種に詳しくない人でも簡単に扱えるよう、パラメーターの設定は細かすぎないようにするなど、目立たない部分にこだわって設計しました。そのおかげもあり、お客様からは「以前のものよりわかりやすく・使いやすくなった。」と好評をいただきました。まず1つここは注目してほしい点です。また、今後もアップデートを重ね使いやすくしてまいりますので、期待していただけたらと思います。-実証実験で苦労した点はありますか?(実証実験の詳細についてはこちら、実証実験の結果についてはこちら)山田さん)弊社では衛星から取得するデータや、圃場に設置したセンサのデータを扱うことには慣れていましたが、MFMさんとの実証実験を実施するまでは、実際の農機での作業にこれらデータを適用したことはありませんでした。実証実験の初期に、試作したデータをもとにお客様の農機で肥料を散布した際に、ファイル形式と農機の組み合わせの問題で肥料の散布量が予定の1/10になるトラブルが発生しました。実証実験の開始が危ぶまれる状況でしたが、すぐにMFMさんが現地に駆けつけて原因究明を実施し、解決することができました。農機を熟知しているMFMさんがパートナーだったおかげで、乗り越えることができたと思っています。-農家さんに実証結果を伝える時もご苦労があったのではないですか?山田さん)その点はこのプロジェクトで改善していった部分だと思っています。数字だけだと分かりづらいので、図や絵にして伝えるように心がけました。数値を視覚的にわかりやすく表現することが重要だと思っています。-操作性のこだわりとは別に、開発時にこだわったポイントはありますか?中村さん)施肥の設定で 積み上げ と 割合(画像1) があります。この割合は肥料の総量が決まっている場合に、圃場内の生育状況に応じて肥料を配分する機能です。圃場内の場所毎に施肥の量を自動計算するため、計算ロジックは非常に複雑となり、開発に数週間を要しました。苦労した甲斐があり、いまでは大変好評を得ている機能です。画像1 施肥マップ作製画面(割合)-エンジニアの方がここまで現場に赴いてくださるとは、想像していませんでした。意識的に行っているのでしょうか?中村さん)サービスの中でもお客様が直接目にする画面の開発は、実際にお客様に使って頂いてフィードバックを受けて改善を繰り返すことで、本当に必要とされているものに近づくと考えています。我々のチーム全員がこの意識を持っていますね。山田さん)エンジニア側も技術開発だけでなく、ビジネスデザインをするマインドを持っていて、お客様とのコミュニケーションを大事にしており、現場に積極的に行くようにしています。-他社サービスとの違いや強みはありますか?中村さん)CropScopeの可変施肥の特徴はとにかく簡単に使える点です。従来は非常に手間暇をかけて可変施肥を実現していました。CropScopeを使うと、施肥のリコメンドが得られるだけでなく、そのまま可変施肥のマップ作成まで完了します。慣れていない人でも扱いやすいのが大きな強みです。また、衛星画像でのモニタリングだけでなく、農家さん同士の連携などコミュニケーションツールとしての面も兼ね備えています。圃場の管理・記録という点でも強みになっていると考えています。さらに、MFMさんは農家さんとの結びつきが強いため、現場からのフィードバックがどんどん上がってきます。その現場の声をもとに農家さんが使いやすいようにサービスの開発を進めています。-CropScopeをどのような方に使ってほしいですか?中村さん)今まで使ってくださっている方々に加えて、これから新しく農業を始める方に使っていただきたいと思っています。高齢化に伴いナレッジを新しく始める方に継承するような手段としてもお使い頂ければと思います。-CropScopeで実現したい農業の未来はありますか?中村さん)CropScopeのプロダクトビジョンはMaximize agricultural productibity with confidence(マキシマイズ アグリカルチュラル プロダクティビティ ウィズ コンフィデンス) (自信を持った意思決定をして農業生産性を最大化する)です。「可変施肥がよくわからない・自信はないけど収量をあげたい」といった人や、「自信はあるけど、日頃の作業の裏付けにしたい、データを蓄積していきたい」といった方々の役に立っていきたいです。ゆくゆくはAIなどを活用して自動化や最適化ができるようにし、誰もがCropScopeを使えば生産性を上げられる未来になればと思っています。